家づくりコラム
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断熱性能の重要性を再認識しましょう
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昔の断熱性能と比較検討してはいけません
日本の住宅は先進国の中でも断熱についての意識は低いと言われています。
本当に昔の話ですが、家づくりの住環境は夏を基準として考えるのが適当とされていた事が原因だからかもしれません。
なぜ夏を基準として考えた方が良かったのかというと、夏と冬では死者が夏の方が多かったからです。(昔は冷蔵庫がなく、食中毒が原因での死者が多かったようなのです。)
もう一つ原因があるとすれば、日本人は我慢強いし、我慢する事が美徳とされている点があるからと考えています。
夏は暑く、冬は寒くて当たり前
そのような考えが戦後から昭和にかけて、さらに平成の現代でも根強く残っています。(参考までに現代は夏より冬の死者の方が圧倒的に増えています。)
では、住宅施策で断熱についての意識改革は出来なかったのか?というと、行政の方でも補助金(住宅エコポイント等)を出すなどして、少しでも住宅の断熱性能を高めようと努力してくれています。
しかし、そういった制度を利用する時のみ補助金目的で断熱性能を向上させて、その期間が過ぎてしまえば元通りになってしまうという事を繰り返してきました。
住宅を供給するものとして、本当にそれで良いのでしょうか?
現在のある程度の基準を満たす省エネ性能は平成11年に定められたものです。そうです。もう20年も前に定められたものなのです。
ところが、20年前に定められた基準にも関わらず、これをクリアしていない住宅もいまだに作られています。それらのお家の断熱基準はというと平成4年と11年を足して2で割ったくらいのものが多いです。(壁・天井共にグラスウール10K100mm相当)
そのような住宅を供給している会社(個人事業主)は口をそろえてこう言います。「昔はもっと寒かったんだから、これで十分なんです。」と。確かに、昔の性能と比べると十分暖かいです。でも、そんな昔の基準と比べる事自体がおかしいのです。自動車業界だって、昔の基準をひっぱりだして、今の自動車の排ガスのクリーンさや燃費の良さを訴求しないですよね。「昔の車は1Lあたり、5kmしか走れなかったのですが、最近のは15km走れるので十分です。」なんて。
悲しい事に、一部の住宅ではその比較が通ってしまい、平成11年基準が業界内に浸透する事なく、ズルズルと今日まで至っているのが現状です。
そんな中、東日本大震災をきっかけに【エネルギーを出来るだけ使わない住宅】という視点での議論が加速し、平成25年基準が取り決められました。(といっても、断熱先進国の基準としては最低基準です。)
そして、2020年にはその基準に適合しない断熱性能の住宅は新築出来ないという法のロードマップも策定されました。
と、ここまで法律のお話をしたのですが、今日は法律の説明をしたいのはありません。
行政が一生懸命に住環境の整備を図ってくれているのに、私達住宅供給業者がその流れを止めてはいけないのでは?と個人的に強く思っている事と、もし、アナタが建築をお願いしようとしている住宅メーカー担当者の断熱意識が低いのであれば、アナタがメーカーに「最新基準での断熱性能を希望します」とハッキリと伝えて欲しい。という事をお伝えしたいのです。
もしかしたら住宅メーカーから「昔に比べると今の住宅はとっても断熱性能が良いのでご安心してください。」と言われる事もあるかもしれません。しかし、上にも述べたように昔と比べる事自体がナンセンスなのです。昔は断熱意識と性能が相当低かったのですから。
- 断熱材の性能をあげる
- 家の中の空気を温度を変えずに換気(循環)できる高性能機器の導入
- 外部との隙間が少なくなる工法
断熱性能を向上させるには色々な方法がありますが、やはりご予算も絡んできます。したがって、無責任に「断熱性能を追求した家づくりをしてください」とは言えませんが、出来れば最低でも平成11年基準、可能であれば平成25年基準の断熱を実現できるようにご検討される事をおすすめします。
断熱性能を向上させる事によって、得られるメリットについてはまた別のコラムでご紹介します。
一生に一回に家づくり。「そんな事(メーカー)から提案されてないし、知らなかった」という後悔をしないように気をつけて下さいね。